ispaceの月面着陸ミッション2:結果と株式市場の反応

月面に着陸した月着陸船「RESILIENCE」(左上)と、小型月面探査車「TENACIOUS」(右下)の想像図(出典:ispace)

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日本の宇宙ベンチャー企業ispaceが挑む「SMBC x HAKUTO-R VENTURE MOON」ミッション2の月面着陸が、2025年6月6日未明(日本時間)に実施されましたが、残念ながら失敗に終わりました。民間企業としてアジア初の月面着陸を目指したこの挑戦は、技術的な偉業だけでなく、株式市場でも大きな注目を集めていました。以下は、現在の状況と最新の動向です。

今までのミッションの進捗

ispaceの月着陸船「RESILIENCE(レジリエンス)」は、2025年1月15日にSpaceXのFalcon 9ロケットで打ち上げられ、約5か月の低エネルギー軌道を経て月へ向かいました。以下はこれまでの主なマイルストーンです。

  • 打ち上げと初期段階:1月15日、フロリダのケープカナベラルから無事打ち上げ。
  • 月フライバイ:2月15日、月面に接近し、フライバイを成功(Success 5)。
  • 軌道制御:4月24日に深宇宙でのマヌーバ完了(Success 6)、5月7日に月周回軌道へ到着(Success 7)、5月28日に約100kmの円軌道へ移行(Success 8)。
  • 着陸予定:当初6月5日19:17 UTC(6月6日4:17 JST)を目標としていましたが、最新発表で6月6日4:17 JSTに更新。着陸地点は月の北部「氷の海(Mare Frigoris)」の中央付近(北緯60.5度、西経4.6度)で、3つの予備地点も用意されていました。

着陸船は月面約100km上空を時速約5,800kmで周回し、状態は正常と報告されていました。ispaceはグローバルライブ配信で着陸の様子を公開し、CEO袴田武史氏は「前回の教訓を活かし、非常にスムーズな開発・運用を実現」と自信を示しました。成功していれば、小型ローバー「TENACIOUS」が展開され、レゴリス(月の砂)の採取や移動の実証、ユーグレナの食料生産実験、高砂熱学工業の水電解装置などのペイロード運用が行われる予定でした。

着陸の最新状況

2025年6月6日9:00 JST、ispaceは記者会見で「RESILIENCE」の月面着陸が失敗に終わったことを正式に発表しました。

  • 通信の状況:着陸直前に信号とその月面反射が観測されたものの、着陸予定時刻頃に通信が途絶えました。その後、通信の回復が確認できず、ミッション2は終了となりました。
  • 失敗の原因:月面との距離を測るレーザーレンジファインダーにおいて、計測値の取得が遅れたことが判明。また、月面着陸に必要な速度まで十分に減速できず、ハードランディングが発生し、月面に衝突したと推定されています。テレメトリデータでは「高度192mまで確認できたが、想定より速い降下スピードだった」(同社CTO 氏家亮氏)と報告されています。
  • 今後の対応:ispaceは詳細な原因の究明を進め、結果を改めて報告する予定です。

東京都内で開催された着陸応援会には、深夜にも関わらず従業員やパートナー企業など500名以上が来場(中継先のルクセンブルクやアメリカなど4拠点の総人数は1500人)。多くの期待が寄せられていましたが、残念な結果となりました。

株式市場の反応

ispace(証券コード:9348)は、ミッション2の進捗に伴い、株式市場で注目を集めていました。以下は最近の動向と失敗発表後の見通しです。

  • 期待の高まり:6月3日、欧州宇宙機関(ESA)との契約拡充(437百万円の追加収益)や政府のバックアップ強化が発表され、株価は前日比+11.00円(+1.02%)上昇。PTS夜間取引では1,100円を突破し、投資家の期待が復活しました。
  • 変動の激化:6月2日に機関投資家の空売り圧力で-83.00円(-7.16%)と急落するも、着陸直前の6月4日は+4円(+0.37%)と小幅上昇。
  • 直前の動き:6月5日、機関の大量空売りで株価は1,044円まで下落(-47.00円、-4.31%)する一方、PTSでは買い戻しが入り1,090円台を回復。投資家の期待と不安が交錯していました。
  • 失敗発表後の見通し:2023年のミッション1失敗時には、株価が約2,000円から1,000円に半減し、ストップ安が2日連続で続きました。今回の失敗発表後、株価はさらなる下落圧力に直面する可能性があります。一部の投資家は「夢を買った」と応援の姿勢を示す一方、リスクの高さから静観する動きも見られます。

現在の状況と今後の展望

ispaceのミッション2は、月面着陸に失敗し、アジア民間初の快挙は達成できませんでした。CEO袴田武史氏は記者会見で「2回目も着陸できなかった事実を重く受け止めている。ただし、この結果を生かして、ミッション3や4につなげていくことが何よりも重要だと考えている。しっかりと前に進むために、強い気持ちを持ち続けたい」と述べました。

失敗の原因究明が進み、得られたデータは2026年予定のミッション3に活かされる予定です。ispaceは月面資源開発やシスルナー経済の構築に向けた挑戦を続けます。私たちは引き続き、ispaceの今後の動向を注視し、アジアの宇宙ベンチャーの挑戦を一緒に応援しましょう!

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