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Appleがついに、App StoreのWeb版(ブラウザ版)を公開しました。
URLはこちら:https://apps.apple.com/jp/iphone/
Safariはもちろん、ChromeやEdgeなど、どのブラウザからでもアプリの詳細ページを閲覧できるようになっています。
実際に使ってみてまず驚くのは、「iPhoneやiPadのアプリ情報を、PCの大画面でサクサク確認できる」こと。
今までは、気になるアプリの機能を詳しく調べたいとき、iPhone画面で説明文をスクロールし続けたり、5〜6枚目のスクリーンショットを確認するために何度も指をスワイプしたり。レビューを読み込もうとすると画面が狭くて文字が小さく、結局「あとで見よう」と後回しにしてしまう…そんな経験はありませんでしたか?
それが、ブラウザ版の公開によって一気に解消されました。アプリ探しが圧倒的に快適になり、比較検討の質が根本的に変わったのです。
では、なぜAppleは長い間ブラウザ版を提供してこなかったのか?そして、なぜ”今”実装したのか?
その背景と理由、ユーザーのメリット、SNSの反応までまとめます。
なぜ今まで”Web版App Store”を公開していなかったのか?
Appleは長年、アプリ情報をApp Storeアプリのみに閉じてきました。その理由は明確で、大きく分けて3つあります。
理由1. ビジネス的な理由(最重要)
App StoreはAppleにとって最重要の収益基盤です。2023年のサービス部門売上は約850億ドル(約12兆円)にのぼり、その中核がApp Store手数料収入。
アプリの検索〜インストールまでを完全に囲い込むことで、
- ユーザーの行動データ:どんなアプリがどの時間帯に検索されるか
- アプリの販売経路:Apple経由でしか配信できない仕組み
- 手数料30%の収益構造:年間数千億円規模の収益源
これらすべてをAppleがコントロールできる環境を維持してきました。
もしWebで自由に検索できるようになると…
- Google検索の結果に埋もれ、Apple独自のアルゴリズムが機能しなくなる
- 外部のアプリ紹介サイトやアフィリエイト経由で誘導され、Appleの影響力が低下
- 「App Store内ランキング」や「Today特集」といったApple独自のレコメンド価値が薄まる
- 最悪の場合、ユーザーがWeb経由で直接アプリをダウンロードする流れが生まれる
こうした「App Store独占」のメリットが弱まる可能性があり、Appleにとって大きな”リスク”でした。
実際、2021年のEpic Games訴訟では、「App Storeは独占的すぎる」という批判が世界中で噴出。Appleはこの訴訟で一部敗訴し、外部決済システムの許可を余儀なくされています。Web版の公開を避けてきた背景には、こうした「エコシステム防衛」の意図が強く働いていたと考えられます。
理由2. 技術的な理由
App Storeのデータは国ごとに大きく異なります。
- 価格:有料アプリやアプリ内課金の価格が国ごとに異なる(日本では160円のアプリがアメリカでは$0.99など)
- レビュー内容:日本語レビューと英語レビューは完全に別管理
- 年齢区分:国によって17+だったり12+だったり
- 審査状況:中国では特定機能が削除されているバージョンが配信される
- 提供国の違い:175カ国のうち、どの国で配信されているかは個別に管理
これらを「Webで安全に出し分ける」には膨大な仕組みが必要でした。
たとえば、日本のユーザーがアメリカ版のアプリページを見たとき、
- 価格はどう表示すべきか?
- レビューは英語版を見せるのか?
- 「このアプリは日本では利用できません」という警告をどう出すか?
- ダウンロードボタンはどう制御するか?
Appleの厳格な品質基準を満たしつつ、世界175地域すべての情報をWebで正確に配信するのは簡単ではありません。App Storeアプリならネイティブ処理で完結しますが、Web版となるとサーバー側での複雑な制御が必要になります。
さらに、2020年代に入ってからはプライバシー保護の強化も大きな課題でした。WebサイトでユーザーのIDや購買履歴を扱う際、GDPRやCCPAなどの規制に完全準拠する必要があります。App Store内ならAppleのコントロール下ですが、Web版となるとブラウザのCookie規制やトラッキング防止機能の影響も受けるため、技術的ハードルが一気に上がるのです。
理由3. ユーザー行動の問題
実際、ユーザーの大半は、
- アプリを探す → iPhoneで
- 説明を読む → iPhoneで
- ダウンロードする → iPhoneで
という流れに慣れていました。
2010年代の調査では、「PCでアプリを検索してからスマホでインストールする」という行動パターンは全体の5%未満。ほとんどのユーザーは、思いついたその場でスマホを取り出し、App Storeアプリを開いてダウンロードしていました。
つまり、「Web版を作るより、App Storeアプリを改善したほうが効果が大きい」という判断が長年続いたと考えられます。
実際、Appleは2017年にApp Storeアプリを大規模リニューアル。「Today」タブを新設し、エディターによるアプリ特集を強化。検索結果の表示も改善し、動画プレビュー機能も追加しました。この方針は成功し、App Storeからのアプリダウンロード数は年々増加。「Web版は不要」という判断を裏付ける結果となっていたのです。
なぜ”今”ブラウザ版を公開したのか?
結論から言えば、EUの新しい規制(DMA)と、Apple自身のAI戦略の強化、そしてMacユーザー層の変化が大きく関係しています。
理由1. EUのDMA(デジタル市場法)への対応(最重要)
2024年3月に施行されたEUのDMA(Digital Markets Act)は、Appleに対し以下を強く求めています。
- App Storeの独占をやめろ
- 外部ストアの利用を許可しろ
- Web経由のアプリ配布も認めろ
- アプリ情報はWebからも閲覧できるようにしろ
つまり、「App Storeを閉じた世界にしてはいけない」という流れが加速。
DMAに違反した場合、Appleは全世界売上の最大10%(約5兆円)の制裁金を科される可能性があります。これは単なる警告ではなく、実際にEUは2023年にGoogleに対して43億ユーロ(約6500億円)の制裁金を科した実績があります。
Appleとしては、「透明性を強化しています」「ユーザーの選択肢を広げています」という姿勢を示す必要があり、Web版App Storeの整備はその一環と見られています。
実際、2024年には以下の対応も同時に進められています:
- 外部決済システムの許可(手数料は27%に引き下げ)
- サイドローディング(App Store以外からのインストール)の部分的許可
- デフォルトブラウザの選択画面表示
- App Storeの検索結果における自社アプリ優遇の見直し
Web版の公開は、こうした一連の「開放政策」の象徴的な施策なのです。
理由2. Apple Intelligence / 新Siri時代に備えた”検索データの強化”
2024年のWWDCで発表されたApple Intelligenceは、2025年以降本格展開されています。AppleはSiriやApple Intelligenceを大幅に強化しており、その中核機能の一つが「AIによるアプリ推薦」です。
将来的には、
- 「仕事の効率を上げるアプリを教えて」
- 「無料で使える写真編集アプリのおすすめは?」
- 「今日のランニングデータを記録できるアプリ出して」
といった自然言語でのリクエストに、SiriがApp Storeから最適なアプリを探して提案する機能が実装される見込みです。
そのためには、Web検索とApp Store検索を統合できる環境が必要。従来のApp Storeアプリだけでは、GoogleやBingといった検索エンジンとの連携が難しく、AI時代の検索体験に対応できません。
Web版を整備することで、
- 検索エンジンがApp Storeのデータをクロールできる
- Siriが外部検索結果とApp Store情報を統合できる
- Apple Intelligence内での「アプリ発見体験」が向上する
という基盤が整うわけです。
理由3. Macユーザーの増加とニーズの変化
M1/M2/M3世代のMacが普及したことで、「PCの大画面でアプリを探したい」というニーズが急増しています。
特に、
- 在宅ワーク層:Macで仕事中、業務効率化アプリをじっくり比較したい
- 学生層:MacBook Airで課題をやりながら、勉強アプリを探したい
- クリエイター層:動画編集中に、新しい音源アプリや素材アプリを探したい
こうしたユーザーにとって、「iPhoneを取り出してApp Storeを開く」という動作は意外と面倒。作業中の画面を離れたくないのです。
2024年のApple決算発表では、Macの販売台数が前年比4.5%増の約2290万台。特に米国市場では第4四半期に25.9%もの成長を記録し、教育市場とビジネス市場での伸びが顕著でした。M3/M4チップ搭載Macの人気が追い風となり、Mac中心のユーザー層が拡大しています。
理由4. GSO(Google Search Optimization)対策
AI検索時代(GSO時代)には、Web上のコンテンツやデータをAIが参照するため、Web版を作ることは避けて通れません。
従来のSEO(検索エンジン最適化)は「Googleの検索結果で上位表示」が目的でしたが、2025年以降は「AIアシスタントに正確に理解されること」が重要になっています。
たとえば、
- ChatGPTに「おすすめのタスク管理アプリは?」と聞いたとき
- Google Bardに「無料の動画編集アプリを比較して」と依頼したとき
- Perplexityで「iPhone向け家計簿アプリのランキング」を調べたとき
これらのAIが参照できるのは、Web上に公開されている情報のみ。App Storeアプリにしかデータがない場合、AI検索には一切表示されません。
AppleがApp StoreデータをWebに公開することで、
- 検索エンジン(Google、Bing、DuckDuckGo)
- AIアシスタント(ChatGPT、Gemini、Claude)
- Siri
- Google Discover
- SNSシェアカード(Twitter、Facebook)
これらとの連携が強化され、アプリの発見性が飛躍的に向上します。
実際、Web版公開後、Google検索で「iPhone 家計簿アプリ おすすめ」と検索すると、App Storeの公式ページが検索結果の上位に表示されるようになりました。従来はアフィリエイトサイトやまとめ記事ばかりでしたが、今後は公式情報が優先される流れになるでしょう。
Web版App Storeを使うメリット(実際に使って感じた点)

iPhoneアプリの説明を、Macの大画面でゆったり確認できるのは別次元の快適さです。
具体的には:
- 長い説明文が読みやすい:生産性アプリなど、機能説明が3000文字を超えるものも多い。iPhone画面だと延々とスクロールですが、PCなら一気に全体を把握できます。
- 大きなスクショでUIがはっきり分かる:アプリの操作画面を27インチディスプレイで確認すると、細かいボタン配置やフォントの見やすさまで判断できます。
- レビューが一覧で見れる:星1と星5のレビューを並べて読むことで、アプリの本当の実力が見えてきます。
- 横断的にタブを開いて比較できる:タスク管理アプリを5つ同時に開いて、価格・機能・デザインを比較。これがPCなら自然にできます。
実例:
私が実際に「家計簿アプリ」を探したときのこと。iPhone画面で1つずつ見ていたら、各アプリの詳細機能(銀行連携の対応数、レシート読み取り精度、無料プランの制限内容など)を比較するのに30分以上かかりました。
それがWeb版なら、良さそうだなと思ったアプリをそれぞれ別タブで開いて、PC画面で横並びに比較。わずか10分で機能一覧表を自作して、自分に合ったアプリを選べました。
「これなんで今まで無かったんだ…」と心から感じるレベルの改善です。
クリエイターやレビュアーにとって、これは本当に大きなメリット。
従来の作業フロー:
- iPhoneでApp Storeを開く
- アプリページをスクロールしながらメモ
- スクショをiPhoneで撮影
- AirDropでMacに送信
- 記事を書きながら、また情報確認のためにiPhoneを見る
Web版を使った新フロー:
- MacのブラウザでApp Storeを開く
- 情報収集も画像保存もすべてPC上で完結
- 記事執筆と同時進行で確認可能
具体的なメリット:
- 情報収集がPCで完結:複数タブで複数アプリを開き、情報を効率的に集められる
- スクショもすぐ確認:ブラウザ上でスクショを拡大表示し、記事に使う画像を選別
- アプリページのリンクも貼りやすい:URLをコピペするだけ。App Storeアプリだとリンク取得が面倒でした
- App Storeアプリが勝手に起動しない:作業の流れが中断されない
私自身、定期的にアプリレビュー記事を書いていますが、Web版の登場で作業時間が3割減。特に「複数アプリ比較記事」を書くときの効率化が劇的でした。
YouTubeの台本作成時も、アプリの正確な情報をすぐにコピペできるため、誤情報を防げるようになりました。
今までは、App Storeのリンクを開くと自動でApp Storeアプリに飛んでしまうという不便さがありました。
たとえば、
- XでアプリURLをシェアしたとき
- LINEで友達におすすめアプリを送ったとき
- Slackで同僚に業務アプリを共有したとき
リンクをクリックすると強制的にApp Storeアプリが起動し、「ちょっと情報だけ見たかっただけなのに…」というちょっと面倒な状況に。
ブラウザ版なら、リンクを踏んでもWebページとして開けるため、
- 軽く内容確認 → そのままブラウザで完結
- 気に入ったらダウンロード → そこで初めてApp Storeアプリへ
という自然な流れになります。
「アプリ名 + iPhone」でGoogle検索した時に、App StoreのWebページが上位に出るようになり、アプリ発見性も向上します。
実例:
- 「Notion iPhone」で検索 → App Store公式ページがトップ表示
- 「写真編集アプリ 無料」で検索 → App Store内の該当カテゴリが表示
- 「タスク管理 iPad おすすめ」で検索 → App Storeの生産性カテゴリが表示
これまでは、アフィリエイトサイトやまとめブログが上位を占めていましたが、今後は公式の正確な情報が優先表示される可能性が高まります。
特に、
- 新しいアプリを探しているユーザー
- 特定機能を持つアプリを検索したい人
- レビュー評価を確認してから判断したい人
にとっては、検索結果からダイレクトにApp Store公式情報にアクセスできるのは大きなメリットです。
企業が自社サイトで「アプリはこちら」とリンクを貼る際、これまではApp Storeアプリへの強制遷移がユーザー体験を損ねていました。
Web版の登場により、
- 企業サイト → App StoreのWebページ → ユーザーが納得してからダウンロード
という、より自然な導線が作れるようになりました。
特に、BtoB向けアプリや高額サブスク型アプリでは、「まず詳細情報をじっくり確認してから判断したい」というニーズが強いため、Web版の存在は大きな意味を持ちます。
Xでの反応まとめ
Web版App Store公開後、SNS(特にX)では様々な反応が見られました。
ポジティブな反応
- 「普通に便利。もっと早く出してほしかった」:最も多かった反応。特にMacユーザーからの歓迎の声が目立ちました。
- 「Macでアプリ探せるの最高」:在宅ワーク中にアプリを探す際、PC画面から離れずに済むと好評。
- 「アプリ紹介のブログ書く人には神アップデート」:クリエイター層から絶賛の声多数。
- 「レビュー比較がめちゃくちゃ楽になった」:複数タブで開いて比較できる点が高評価。
- 「検索結果から直接アプリ情報が見れるの便利すぎ」:Google検索との連携を評価する声。
ネガティブ・指摘系の反応
- 「インストールだけはまだアプリに飛ばされるのか」:最後の最後でApp Storeアプリが起動する点への不満。
- 「EU規制対策で仕方なくやっただけでは?」:Apple批判派からの冷ややかな見方。
- 「結局App Storeアプリの方が使いやすい」:慣れの問題もあり、従来派の意見も。
- 「情報の読み込みが遅いときがある」:サーバー側の処理速度への指摘。
- 「日本語表示がおかしい箇所がある」:ローカライゼーションの未完成部分への言及。
開発者視点の反応
- 「APIが大幅に更新されている」:App Store Connect APIにWeb対応の新エンドポイントが追加されたとの報告。
- 「ASOとGSOの境界が曖昧になりそう」:アプリマーケティング担当者からの戦略的考察。
- 「これでApp Storeのクローラー対策が必要になる」:SEO専門家の分析。
- 「スクレイピング対策はどうなってる?」:データ保護観点からの技術的議論。
- 「App Store内検索とGoogle検索の統合が進むか」:今後の展開を予測する声。
中立・分析系の反応
- 「DMA対応の一環だろうけど、ユーザーにはメリット大きい」:規制と実益の両面を評価。
- 「Appleの戦略転換の象徴的な動き」:Apple Watcherによる分析投稿。
- 「これでアプリのバイラル性が変わる可能性」:SNS拡散効果への言及。
- 「サイドローディング解禁の布石では」:将来の政策変更を予測する見方。
まとめ:App Storeの”Web化”は静かに大きな転換点
Web版App Storeの公開は、一見地味なアップデートに見えますが、実際にはユーザー体験・検索性・AI時代の準備のすべてに影響する、非常に大きな転換点です。
特に、
- PCでアプリを探したい人:作業効率が劇的に向上
- ブロガーや動画クリエイター:コンテンツ制作が3割効率化
- アプリをじっくり比較したい人:複数タブ比較で納得の選択が可能に
- 企業のマーケティング担当者:自社サイトからの自然な導線設計が可能
- アプリ開発者:GSO対策という新しいマーケティング領域が誕生
にとっては革命級の便利さです。
今後はSiriやApple Intelligenceとの連携も強化され、「アプリ検索はブラウザでも普通に行う時代」が当たり前になっていくでしょう。
さらに、この動きはApp Store以外のプラットフォームにも影響を与える可能性があります。Google Play StoreやMicrosoft Storeも、Web版の改善を迫られるかもしれません。
AppleがついにWeb化に踏み切ったこの2025年は、「アプリストアの新時代」の幕開けとして記憶される年になるはずです。

