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――写真を愛する人々と富士フイルムのすれ違い
発売日が近づくと、ざわつく。
「今回こそ買えるだろうか」
「今度こそ、手に入れたい」
富士フイルムの新製品発表には、もはや恒例の“行列ができない行列騒動”がつきものです。
今回の主役は、X half。
名前に“half”とあるけれど、これだけは言いたい。
買えるチャンスは、halfどころか、quarter(4分の1)以下です。
6月16日 午前10時。
予約開始の合図と同時に、みんな一斉にクリック、クリック、リロード。
マップカメラは“おしくらまんじゅう”、キタムラは“ドア半開き”、ヨドバシは“ちょっとだけ高いけどポイントで帳尻合わせ”戦法。
あれよあれよという間に、どのサイトでも「完売」の札が掛かる。
もはや写真愛好家たちによる“無音の協奏曲”とでも呼ぶべきか。
高らかに響き渡る「ポチれない音」。
この“無”の響きが、むしろ壮大で、美しく、そしてちょっと悲しい。
富士フイルムという会社は、カメラを“作る”ことに誠実すぎて、売るタイミングを間違えることで有名です。
いや、間違えてるわけじゃない。きっと在庫がないだけ。
「作ったけど、足りなかった」
「好評だけど、終売しました」
それが、もう“様式美”になってるから、こちらも怒る気にもならない。
でもね……
“好評につき販売終了”って、冷静に考えて、ものすごくおかしい言葉なんですよ。
今回のX half、たしかに素晴らしいカメラです。
縦型センサー、240gの軽量ボディ、レバー巻き上げのアナログ風味、Light LeakやExpired Filmの再現…
フィルムカメラのあの「一枚に賭ける気持ち」を、デジタルで蘇らせてくれました。
でも、その体験は、買えた人だけのもの。
SNSを見れば、「買えた!」「届くの楽しみ!」の投稿が並び、その合間には「また買えなかった…」「抽選にしてよ…」のつぶやき。
誰も悪くないけど、何かが間違っている。
そんな不協和音が、この協奏曲の奥に潜んでいます。
Amazonには早くも30種類以上のスキンシールが出ているけれど、肝心のカメラがない人にとっては、ただの“ステッカーの見本市”。
カスタマイズも夢のまた夢。
まるで、鍵を持たずにガレージのカスタムパーツを眺めてるみたいなものです。
フィルムカメラは高い。
現像代もかかる。
それでもあの頃、人は「1枚に意味を込めて」撮っていた。もっと安かったけど。
今、デジタルになって、撮るのは自由になったけど、“買う自由”は失われつつあるのかもしれません。
X half 協奏曲。
それは、懐かしさと憧れと、そしてちょっとした怒りと諦めが奏でる、買えなかった人々のためのレクイエム。
でも、どうか富士フイルムさん。
私たちにもう一度、この協奏曲の続きを聴かせてください。
今度は“全員参加型”で。
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