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台湾メディアDigiTimesの報道によると、AppleはノートPC市場でのシェア拡大を狙い、599ドル(約8万9千円)という破格の価格からの超低価格MacBookを開発しているようです。実現すればMacBook史上初めて定価が1,000ドルを下回るモデルとなり、早ければ2025年末にも発売される可能性があるとのこと。
この記事では、この噂の低価格MacBookについて、搭載が見込まれるA18 Proチップの特徴や既存Mシリーズとの違い、599ドルという価格のインパクトと過去の廉価版MacBookとの比較、さらに現行最安モデルとのスペック・価格差、そして発売時期の予測や教育市場を狙ったAppleの戦略まで詳しく解説します。
A18 Proチップとは? Mシリーズとの違い
噂の廉価版MacBookには、Apple A18 Proチップが採用される見込みです。このA18 Proは元々iPhone向けに開発されたSoC(昨年発売のiPhone 16 Proに初搭載)であり、もしMacに搭載されれば初の「iPhoneチップ搭載Mac」となります。これまでAppleシリコン搭載Macは、M1やM2などのMシリーズチップを用いてきました。Mシリーズは主にMac向けに設計され、より多くのCPUコア数、より大きなメモリ容量、外部ディスプレイのサポート強化などが特徴です。一方、A18 Proはスマートフォン向けのため設計思想が異なり、搭載コア数や対応機能面でいくつか制限があります。

具体的なスペック面では、A18 Proは最新の3nmプロセスで製造されるチップで、高性能コア2基(最大4.05GHz)+高効率コア4基(最大2.42GHz)の計6コアCPUと、6コアGPU(768基のシェーダーユニット、最大約1.5GHz)という構成になると伝えられています。対する現行のM2チップは8コアCPU(高性能4+高効率4)に最大10コアGPUを備えるため、コア数ではMシリーズが優位です。またメモリ搭載容量についても、M2チップ搭載MacBook Airが最大24GBの統合メモリを選択可能なのに対し、A18 Pro搭載モデルはスマートフォン向けアーキテクチャのため搭載できるメモリ容量に制約がある可能性があります(iPhone向けAシリーズではこれまで搭載メモリが少量に留まってきました)。
もっとも、日常的な用途であればA18 Proでも必要十分な性能を発揮できる見込みです。事実、初代AppleシリコンのM1搭載MacBook Airですら多くの用途で快適に動作していましたが、A18 Proを積んだ新型MacBookは少なくとも紙の上ではそのM1に匹敵し、シングルコア性能に至っては将来のM3やM4チップに迫るとの指摘もあります。最新世代のiPhone用チップだけに省電力性能も高く、ファンレスの静音設計で長時間のバッテリー駆動も期待できるでしょう。
なお注意点として、A18 ProチップはThunderbolt(高速データ転送や高解像度外部ディスプレイ出力に必要な規格)をサポートしていません。そのため、この廉価版MacBookにはおそらく通常のUSB-Cポートのみが搭載される見込みです。外部モニタ出力もおそらく1台程度に限られるなどの制約がありますが、ターゲットとするユーザー層にとってThunderbolt非対応は大きな問題にはならないかもしれません。要するに、“Pro向け”の拡張性よりも低コスト・十分な実用性能・長時間駆動を重視した割り切りの構成と言えるでしょう。
599ドルという価格の衝撃 – 過去の廉価版MacBookと比較
599ドルという価格設定には正直驚かされます。現在販売されているAppleノートブックの最安モデルは13インチのM2搭載MacBook Air(米国価格999ドル、学生・教職員向け割引で899ドル)で、日本国内での販売価格は164,800円からです。したがって599ドルの新型MacBookは、現行MacBook Airの約6割程度の価格に当たり、その差額は実に300~400ドルにもなります。これはちょうどAppleの小型デスクトップ機Mac mini(M2チップ搭載モデルが599ドル~)と肩を並べる水準であり、ノートブックとしては極めて攻めたプライスタグです。
過去を振り返っても、Appleがここまで安価なノートブックを投入した例はありません。たとえば2015年に登場した12インチMacBookは、超薄型・軽量を追求した意欲作でしたが、その発売当初の価格は1,299ドル(日本では約15万円)と高価でした 。小型サイズゆえ性能面の妥協もあり、結果的に2019年にひっそりと販売終了しています。次に2018年発売のMacBook Air(Retinaディスプレイ搭載モデル)は、従来の非Retina版MacBook Airに代わるエントリーモデルとして投入されましたが、発売時の価格は1,199ドル(日本では約134,800円)とこちらも決して安価ではありませんでした。その後AppleはMacBook Airの価格を徐々に見直し、2020年のM1モデル以降は999ドルに据え置いてきましたが、それでも3桁ドルで買えるMacノートは長らく存在しなかったのです。
こうした過去の廉価版MacBook(と言っても十分高価でしたが)と比べると、599ドルという価格は桁外れです。約8~9万円という金額は、最新のiPhoneやiPad上位モデルと肩を並べるか、それより安いくらいの水準です。事実、日本でiPhone 16e(128GBモデル)が99,800円(税込)で販売されているのと同程度の価格帯になります。このため「スマホと同じ値段でフル機能のMacノートが手に入る」ことになり、特に予算重視のユーザー層には大きなインパクトを与えるでしょう。MacBook Airがやや高嶺の花だった大学生や若年層でも手が届きやすくなる可能性が高く、「Macを使いたいけれど予算的に諦めていた」層にとって朗報となりそうです。実際このモデルが実現すれば、AppleのノートPC販売台数は年に500〜700万台上乗せされ、全体の出荷台数が現在より30~40%も増加しうるとの予測もあります。価格のハードルを下げることで、新たなユーザー層を大きく取り込めるとAppleが考えていることは明らかです。
現行MacBook Airとのスペック・価格差
現行モデルであるM2搭載の13インチMacBook Air(13.6インチ液晶、8コアCPU/8コアGPU、8GBメモリ~)と、この噂の12.9インチA18 Pro搭載MacBookとを比較すると、価格以外にもいくつか明確な違いが見えてきます。
項目 | M2 MacBook Air | A18 Pro搭載廉価版MacBook(予想) |
---|---|---|
価格(米国) | 999ドル (教育向け899ドル) | 599ドル (教育向けさらに割引の可能性) |
価格(日本) | 164,800円〜 | 約89,000円〜(予想) |
ディスプレイサイズ | 13.6インチ | 12.9インチ(予想) |
搭載チップ | Apple M2 | Apple A18 Pro |
CPU構成 | 8コア(高性能4+高効率4) | 6コア(高性能2+高効率4) |
GPU構成 | 最大10コア | 6コア |
メモリ構成(最大) | 24GB | 不明(おそらく8GB程度) |
ストレージ構成(最小) | 256GB | 128GB(予想) |
ポート | MagSafe+Thunderbolt 3(USB4)x2 | USB-C x2(予想) |
Thunderbolt対応 | あり | なし |
重量 | 約1.24kg | 不明 (12インチMacBook並なら約0.9〜1.1kg) |
バッテリー駆動時間 | 最大18時間 | 長時間 (省電力設計のためAir同等以上の可能性) |
発売時期 | 2022年7月 | 2025年末〜2026年初頭 |
まずディスプレイは、新モデルが12.9インチと一回り小さいサイズになる見込みです。解像度やパネル仕様の詳細は不明ですが、コスト抑制のために最大輝度や色域などスペック面で現行Airより控えめなディスプレイが採用される可能性があります 。一方、画面サイズが小さくなる分、本体はさらにコンパクトかつ軽量になることが期待されます。12インチ級のMacノートといえば2015年のMacBookがありましたが、それに匹敵する携帯性を599ドルで実現できれば魅力は大きいでしょう。
性能面では、前述の通りCPU/GPUコア数や最大メモリ容量でM2チップ搭載のMacBook Airが勝ると考えられます。しかしながらA18 Proも最新世代の高性能チップであり、日常的な使用(ウェブ閲覧、レポート作成、動画視聴、簡単な写真編集など)では体感差が少ない可能性があります。特にシングルコア性能ではA18 Proが非常に高いことが予想され、軽い作業であれば動作はきびきびと快適でしょう。むしろ注意すべきは搭載メモリやストレージ容量の最小構成です。低価格モデルゆえ、例えば標準搭載メモリ8GB・ストレージ128GBといったミニマムな構成で提供される可能性があります。Appleはこの廉価モデルにあえて抑えたスペックを与えることで、「より快適に使いたければ上位のMacBook Airへ」「容量が足りなければ有料アップグレードを」とユーザーに促す戦略も考えられます 。実際、過去にも最廉価のMacBookモデルは性能や容量面で割り切りがありましたので、599ドルMacBookも用途をライトユーザーに絞った仕様となるかもしれません。
拡張性に関しては、前述のThunderbolt非対応に起因して外部ポートや接続周りで差別化が図られるでしょう。現行のMacBook Air (M2) はMagSafe充電ポートに加えThunderbolt 3(USB4)対応のUSB-Cポートを2基備え、外部ディスプレイも高解像度出力が可能です。それに対しA18 Pro搭載MacBookは充電・データ転送とも通常のUSB-Cポートで賄う設計になり、接続できる外部ディスプレイはおそらく1台のみ(4K解像度程度)に限られるとみられます。また筐体素材やキーボード・スピーカーなども、上位モデルに比べて若干コストダウンされたパーツが使われる可能性があります。もっとも基本的なユーザー体験は「MacBook」であることに変わりなく、最新のmacOSや高品質なRetinaディスプレイ、快適なトラックパッド操作などAppleノートならではの魅力はしっかり継承されるでしょう。要は、プロユースや重いクリエイティブ作業にはMacBook Air/Proが適し、メール・ブラウジング・レポート作成中心なら599ドルモデルで十分という棲み分けがなされるはずです。
発売時期の予測と教育市場への戦略
では、この廉価版MacBookはいつ発売されるのでしょうか。報道によれば、一部部品の量産が2025年第3四半期末(9月末)までに開始予定であり、そのスケジュールで進めば年内にも最終組み立てが開始される可能性があります。最終組み立てはAppleの主要サプライヤーであるQuanta社の施設で2025年Q4に行われる見込みで、実際の製品発売時期は2025年末から2026年初頭にかけてになるだろうと予測されています。著名アナリストのMing-Chi Kuo氏も以前に同様の時期(2025年末~2026年初)を予想しており、大きく外れはなさそうです。となると、早ければ2025年秋のAppleイベントで発表され、年末商戦やホリデーシーズンに合わせて出荷が始まるシナリオも考えられます。あるいは量産の進捗次第では、発表だけ年内に行って出荷は年明け(新学期シーズン)になる可能性もあるでしょう。
このタイミングや価格設定から見えてくるのは、Appleの教育市場・学生層への明確な照準です。Kuo氏によれば、Appleはこの手頃な13インチMacBookでChromebookに対抗し、教育現場でのMacBook普及を促進しようとしているとのことです。米国をはじめ各国の学校では低価格なChromebook(GoogleのChrome OS搭載ノートPC)が大量導入されてきました。AppleもこれまでiPadの教育割引提供や学校向け管理システムの整備などに努めてきましたが、実際のハードウェア価格で見るとMacBookは競合に比べ依然高価でした。599ドルのMacBookが実現すれば、「Macのある教室」を増やす大きな追い風となるでしょう。Apple自身も、今回の低価格モデル投入で「iPadのラインナップ戦略をMacでも再現」し、あらゆる価格帯で製品を揃えてユーザーの裾野を広げる狙いがあると指摘されています。事実iPadは3万円台の無印iPadから上位Proモデルまで幅広い価格帯をカバーし市場シェアを拡大してきましたが、Macについても$599→$999→$1299…と段階的に選択肢が用意されれば、ユーザーは自身の予算やニーズに応じてApple製品を選びやすくなります。
また、この新型MacBookにはシルバー、ブルー、ピンク、イエローといったカラフルなカラーバリエーションが用意されるとの噂もあります。これは学生や若年ユーザーの嗜好にアピールすると同時に、上位モデルのMacBook Air/Pro(落ち着いたスペースグレイやシルバーが中心)との差別化にもなるでしょう。かつて1999年にiBook(クラムシェル型のカラーノート)で教育市場を席巻したAppleの戦略を彷彿とさせるものがあります。質実剛健なプロ向けモデルに対し、ポップで親しみやすいコンシューマー向けモデルを投入する手法です。さらに超薄型・軽量なデザインになるとの観測もあり、持ち運びやすさを重視する学生には嬉しいポイントです。価格面でも教育機関向けのボリュームディスカウントや学生割引が適用されれば、実質5万円台後半~6万円台で購入できる可能性もあります。そうなればWindowsノートやChromebookと真っ向から張り合う競争力を持つことになり、Appleとしても将来の顧客を若いうちから囲い込む好機となるでしょう。
まとめ
599ドルという低価格で登場が噂されるA18 Pro搭載MacBookは、Appleのノートブック戦略にとってエポックメイキングな存在になるかもしれません。従来のMacBook Airよりスペックは控えめとはいえ、必要十分な性能と魅力的な価格設定によって「Macデビューのハードル」を一気に引き下げるポテンシャルがあります。
特に学生や若年層、予算が限られたユーザーにとって、本モデルは強力な選択肢となるでしょう。発売が公式に発表されれば大きな話題となること必至ですが、果たしてAppleは年内にこの「格安MacBook」を披露してくれるのでしょうか。 今後の続報に注目したいところです。